突然だが、自分はそれなりに良い胸をしているとスバルは思っている。

 スバルの手では少し余る程の胸は、世間一般の基準に照らし合わせても巨乳と言って良いだろう。走れば揺れるし、風呂に入れば浮くし、手で寄せればバナナの一本くらいは余裕で挟める程度の質量はある。薄着をしている時に、「ああ、こいつ今俺の胸見てたな」とすぐに分かる好色な目で見られたことも一度や二度ではない。

 まあ何が言いたいかと言うとつまり、そんなスバルの恋人なのだし、何より男なのだから、ユリウスもスバルの胸には興味があるだろうと思っていたのだ、つい先程までは。

 

 

 

 スバルの腰を引き寄せていた右手が、背中部分から脇へと移動し、ジャージの生地の上から優しく肌を撫でた。

 キスをしていた顔を離し、閉じていた目を開けると、黄色の双眸が懇願するようにスバルを見つめていた。

 このような関係になって三ヶ月、むしろ我慢強すぎないだろうか、このユリウス・ユークリウスという男は。スバルの方はとっくの昔に……というわけでもないが、二週間ほど前に目の前の青年に抱かれる覚悟は固まっていたというのに。

 場所はユークリウス邸のユリウスの部屋。わざわざ二人の逢瀬を邪魔する野暮な乱入者が現れる予定はなく、スバルの後ろにはベッドがあり、スバルの方の心の準備も出来ている。下着もちゃんとデート仕様だ。中は愛らしい白のレースなのに外はいつものジャージなのは、スバルなりの照れ隠しだと分かってほしい。これでも頑張っているほうなのだから。中も外も可愛いものを身に付けてしまえば、スバルが羞恥心で死んでしまう。

 

「ん……」

 

 良いぜ、だとか、そのままして、と口に出すことは恥ずかしかったので、言葉の代わりにスバルから口付けることで懇願の眼差しへの返答をした。先程までのキスの名残で、どちらのものとも分からない唾液で湿った柔らかな唇が触れ合う。

 キスの先をスバル本人から許可されたと正しく理解したユリウスは、目だけで小さく笑うと、脇で止めていた右手を再び動かし始めた。上ではなく、下の方へ。

 

 あれ、とスバルの頭の中に疑問符が浮かんだ。手の移動する方向が、おかしくはないだろうか。

 が、そんな小さな疑問は、未だ背中に添えられている左手で体を引き寄せられて、深く口付けられることで簡単に吹き飛んでしまった下唇を柔く食まれたかと思うと、ユリウスの熱い舌が口内へと入ってくる。

 ユリウスの背に回していた両手に力を入れて、スバルがぎゅっと体を押し付けるように抱きつく。と同時に、ユリウスの左手は右手と一緒に下へと移動していき、背骨をなぞり、腰を撫で、尾骨部をかすってから、包み込むようにスバルの尻に触れた。

 

「ふっ、ぁ」

 

 スバルの想像していた順序と違う。ユリウス以外との交際経験などないので比較対象はいないが、普通愛撫というのは上半身から始めるものじゃないのだろうか。

 言動が男らしいと言われるスバルの体で最も女性らしいのは胸だ。ユリウスも男なのだから、触るならそちらに行くだろうと思っていたのにこれはどういうことだ。というか、突然セックスでの大本命の近くを触られるのは、いくらスバルでも恥ずかしい。

 

 抗議しようと口を離したところで、尻に添えられるだけだった手にぎゅっと力が入れられた。

 ちょうどユリウスの両手で収まる大きさの、日々の鍛錬で引き締まった、けれど程よく脂肪のついた柔らかな臀部。それが持ち上げられ、そのまま円を描くように手のひらが尻を撫でる。かと思えば、ぐっと指に力が入り、食い込んだ長く細い指が尻全体を撫であげる。

 

「ひっ」

 

 スバルの首筋にユリウスの優美な顔が埋められ、彼の薄い唇が鎖骨に口付けた。リップ音を立てられただけだが、ユリウスの思いも寄らない行動で翻弄されているスバルは、ユリウスの唇が触れた僅かな熱にすら反応してしまう。

 思わず内太股がひくりと揺れると共に、きゅううと尻にも力が入ってしまう。それに気付いたユリウスの両の親指が尾骨部に触れ、落ち込みをなぞりながら下へと移動した。割れ目を暴くように服の上から白い指を押し付けられ、大腿部の間に深く侵入し、指の先が肛門の縁に触れる直前で指が離れる。その間人差し指から小指までは尻たぶの柔らかさを堪能しており、一番肉付き豊かな部分を楽しげに撫でていた。

 

 胸を寄せては離すように、ユリウスの手がスバルの尻を撫でると尻の割れ目が閉じられては開かれる。そのたびまだ誰にも暴かれたことのない、スバル本人すら触れたことのない秘所が、スバルにしか気付けない感触でひちゃりひちゃりと音を立てた。

 ユリウスの唇はいつの間にか首筋を上へと辿り、真っ赤になっているスバルの耳をやわやわと食んでいる。

 抱きしめるように回していた手は、ユリウスのシャツを皺が出来るほど握りしめ、縋りつく形になっていた。

 口を開くと声が零れてしまいそうで、唇を噛んで我慢する。押し付けている胸から鼓動が伝われば、その速さにユリウスはきっと驚くだろう。

 

 尻を揉まれているせいもあって、スバルの腰は今ぴったりとユリウスにくっついている。そうすると身長差の関係もあって、スバルの下腹部にダイレクトに……その、当たってしまうのだ、服越しにユリウスのものが。

 スバルだって、ちょっと言えない場所がちょっと言えない感じにぬるぬるとしてきている。だがスバルのそれはいつものことだ。しかし、今まで幾度もキスをし密着してきたが、ここまではっきりと彼が興奮しているのが伝わってきたことはなかった。

 これは、もしかして。

 スバルが自分の中で一つの推測を打ち立てたと同時に、ジャージ越しの尻を堪能していた手が尻から離れ、腰のゴム部分へと触れた。食い込みの部分を親指で一度だけなぞると、今度は素手で直に蹂躙するために、服の中へ入り込もうとする。

 

「んっ、ちょ、ちょい待った! ストップ! 止まれ!」

 

 素肌に触れた指の感触に心臓が一際跳ね、思わずぐいっと体を引き剥がしてしまう。

 残念そうな目をしていても、流石にこのまま流されるわけにはいかない。……いや、本音を言うと流されてもスバルとしては何も問題はないし、ユリウスもそれを望んでいるだろうが、恋人の嗜好を正しく知っておきたい乙女心も理解してほしい。

 突然おあずけをくらい、あからさまに不満げな表情を浮かべる顔を見上げ、スバルは問いただした。

 

「お、おま、お前もしかして尻フェチか!?」

「ふぇち、とは……?」

「おっぱい派じゃなくて尻派かってこと! ここまで徹底的に尻揉まれる覚悟できてなかったんだけど!? 揉まれるならおっぱいの方かと思ってたのに!」

 

 揉まれすぎて、ユリウスの手が離れた今でも触れられていた感覚が残っている。それがなんだか恥ずかしくて、思わず自分の手で尻を押さえてしまう。

 紅潮した顔のまま睨みつけると、恋人からの威嚇に全くダメージを受けてない美丈夫は、空いてしまった己の両手を見下ろし、閉じて、開いて、最後にぎゅっと握った。

 再び顔を上げたユリウスの顔には反省の色が欠片もない。スバルとて反省を求めているわけではないのだからそれで構わないが、もう少しスバルを翻弄させたことへの申し訳なさを出してほしかった。

 

「すまない、普段は自制していたが、君から直接許しを得て君に触れることができて、少し箍が外れていたらしい」

「普段ってなに!? お前普段から俺の尻に触りたいと思ってたのか!?」

「君にはいつも触れたいと思っている」

「う、ぐぅ、それを嬉しいって思っちゃう自分がくやしい……!」

 

 ぐぬぬ、と手で尻を隠しながら、ユリウスから半歩だけ距離を取ったところで、スバルは理解する。尻だから今まで気付けなかったのだと。胸への視線なら視界に入るが、尻への視線は視界には入らない。スバルが後ろを向いている時限定なのだから当然だ。

 恥ずかしさからもう半歩下がろうとしたところで、ぽすんと柔らかなものが太股に当たり、勢いのまま柔らかなものの正体――ベッドへと座ってしまった。

 開けた距離を一瞬で詰めてきたユリウスが、覆い被さるようにスバルの左右に両手をつく。顔を近づけてきたかと思うと、触れるだけの口づけをしてきて。

 

「ところでスバル、続きをしても?」

 

 そんなことを熱い欲の籠もった瞳で言われれば、頷く以外スバルにはできるわけがなかった。

 

 

 

尻派というかスバル派

 

 

 

ユリウスが尻派なせいで良いおっぱい持ってるのに尻ばっかり揉まれるにょスバが読みたかった。

このユリウス、後背位好きそう。